令和8年(2026年)の地価公示が公表されました。
地価公示は、毎年1月1日時点における標準地の正常価格を国が示すもので、不動産取引の指標であると同時に、相続や資産整理、不動産鑑定評価の重要な基礎資料となります。
本記事では、全国の地価動向を概観したうえで、広島県における住宅地・商業地・工業地の用途別動向と、市町別の具体的な変動率・背景要因について整理します。
全国の地価動向(令和8年地価公示)
国土交通省によると、令和8年地価公示における全用途の全国平均変動率は前年比2.8%の上昇となりました。
上昇は5年連続で、上昇幅はバブル期であった1991年(11.3%)以来の大きさです。
用途別では、
- 住宅地(全国平均):+2.1%
- 商業地(全国平均):+4.3%
となりました。
住宅地は5年連続の上昇ですが、伸び率は前年と同水準にとどまりました。一方、商業地はオフィス需要やインバウンド需要を背景に、上昇幅が拡大しています。
ただし、住宅地については、東京圏・大阪圏で上昇幅が拡大する一方、名古屋圏や地方中枢都市(札幌・仙台・広島・福岡)では、建築費高騰等を背景に伸びがやや縮小するなど、地域差が明確となっています。
① 広島県全体の地価動向(住宅地)
広島県全体の住宅地の平均変動率は1.5%(前年1.3%)となり、昨年から若干上昇率を強めました。
要因としては、
- 広島市および隣接市町
- 福山市
といった主要都市において、駅前再開発の進展により生活利便性の高い地点で上昇傾向が継続していること、
また、都心回帰の流れにより駅近平坦地の需要が強まっていることが挙げられます。
一方で、
- 利便性の劣る郊外型の古い住宅団地
- 人口流出が続く県北部や島嶼部
では空洞化が進行し、下落傾向が継続しています。
② 広島市(県庁所在地)の住宅地動向
広島市内の住宅地は、全区で上昇率を強める結果となりました。
- 中区:4.9%(4.6%)
- 東区:1.9%(1.8%)
- 南区:4.0%(3.4%)
- 西区:3.1%(2.9%)
- 安佐南区:3.0%(2.7%)
- 安佐北区:0.8%(0.6%)
- 安芸区:1.4%(1.2%)
- 佐伯区:3.3%(2.8%)
上昇地点は、都心部への接近性や大型商業施設、駅への近接性に優れる平地の既成住宅地、および中心部近郊で値ごろ感のある住宅地域が中心です。
ただし、広島市内においても、中心部から距離のある古い住宅団地では地価は弱含みで推移しています。
③ 県庁所在地以外(住宅地:人口上位3市・下位3市)
人口上位3市
-
福山市:1.8%(1.6%)
→ 駅前再開発を背景に、中心部に近い住環境良好な住宅地で需要超過 -
東広島市:1.1%(1.0%)
→ JR駅周辺で宅地開発が進み、利便性の高い平地の需要は堅調 -
呉市:0.0%(▲0.3%)
→ 中心部は横ばい~微増、周辺部・島嶼部では弱含み
人口下位3市
-
安芸高田市:0.0%(0.0%)
→ 外延部は下落基調、吉田町中心部では一部宅地分譲 - 竹原市:▲1.2%(▲1.3%)
-
江田島市:▲3.6%(▲4.0%)
→ 人口減少・高齢化を背景に、住宅需要は依然として弱い
商業地の地価動向(広島県)
広島県全体の商業地の平均変動率は3.1%(前年2.7%)となり、やや上昇率を強めました。
JR駅前再開発エリアや、その影響を受ける商業地、インバウンド需要の影響を受ける観光地商業地を中心に、収益性向上への期待感が価格に反映されています。
ホテル需要や民泊需要の高まりから、強い上昇率を示す地点も見られます。
一方、県北部や島嶼部の商業地では、過疎化や顧客流出により下落に歯止めがかかっていません。
工業地の地価動向(広島県)
工業地の県平均変動率は2.6%(前年2.2%)となり、上昇幅が若干拡大しました。
- 広島市・廿日市市の臨海部流通系工業地
- 東広島市内の高速IC近接型工業地
を中心に、売り手市場の状況が続いています。
特に東広島市では、半導体関連産業の需要を背景に、新たな産業団地開発の検討が進むなど、地価上昇要因となっています。
地域政策・再開発と地価への影響
-
JR広島駅周辺
新駅ビル開業、駅前大橋線開通、新病院整備(北口) -
紙屋町・八丁堀地区
官民複合高層ビル整備等の再開発事業の進展 -
東広島市
吉川工業団地周辺の市街地誘導、八本松スマートIC開設 -
呉市
駅前再開発、製鉄所跡地の複合防衛拠点構想 -
廿日市市
宮島口の新ホテル整備、観光交流拠点整備
これらの施策が、地価形成に中長期的な影響を与えています。
出典「R8地価公示 地価公示価格形成要因等の概要」
基町相生通地区市街地再開発事業
実務的に見た今回の地価公示のポイント
今回の地価公示は、
「用途別 × 立地条件 ×
将来性」
による価格差が、これまで以上に明確になった結果といえます。
市町平均の数値だけでなく、どの用途で、どの立地にある不動産かを丁寧に見極めることが、評価実務で重要になっています。
相続や時価把握でお悩みの方へ
相続をきっかけに、「この不動産の時価がどの程度なのか分からない」というご相談が近年増えています。
路線価や倍率だけでは判断が難しいケースも多く、状況に応じて不動産鑑定評価が有効となる場合があります。
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