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令和8年分路線価が発表されました

こんにちは。不動産鑑定士の八尾井です。

71日、国税庁より令和8年分の路線価が発表されました。今回は、この路線価から読み取れる広島県の地価動向について、不動産鑑定士の視点から解説いたします。県全体の動向から各市町の状況、そして特に注目度の高い「広島駅前」と「広島都心部(紙屋町・八丁堀エリア)」の深掘りまで、順にご紹介してまいります。

 

1. 全国の動向 ~5年連続の上昇、下落した県庁所在地はゼロ~

まず全国の状況です。全国の標準宅地の平均変動率は前年比プラス2.9%となり、5年連続の上昇となりました。伸び幅は前年(2.7%)を上回り、現在の計算方法となった2010年以降で最大です。

 

都道府県庁所在地の最高路線価は全47地点が上昇または横ばいとなり、下落した都市はゼロ。これはバブル末期の1991年以来のことです。都市部の再開発やインバウンド(訪日客)増加に伴うホテル・店舗需要が地価を押し上げている構図が鮮明になっています。

 

一方で、都道府県別に見ると8県が下落しており、「伸びる街」と「そうでない街」の二極化が一段と進んでいる点にも注意が必要です。

 

2. 広島県全体の動向 ~平均プラス2.6%、上昇地点は7割超に~

中国地方5県の平均変動率はプラス1.6%5年連続の上昇となりましたが、県別では広島県がプラス2.6%(前年比0.3ポイント拡大)と、中国地方をけん引しています。

 

県内の標準宅地6,967地点のうち、上昇は4,951地点と71.1%を占め、前年より3.1ポイント拡大しました。再開発が進み観光客も集まる広島市中心部の繁華街や、JR広島駅周辺が引き続き上昇をけん引しています。一方、下落は694地点(10.0%)と前年をわずかに上回っており、県内でも上昇エリアと下落エリアの二極化が進んでいます。

 

県内の最高路線価は、例年どおり、広島市中区胡町の相生通り(南側)で、1㎡当たり388万円(前年比プラス4.6%)。17年連続で県内トップ、5年連続の上昇となりました。福屋八丁堀本店前に象徴される八丁堀エリアが、依然として広島の商業地の頂点に位置しています。

中区胡町・相生通り(南側) 福屋八丁堀本店前

3. 各市町の動向 ~都市部の上昇と中山間地域の下落~

広島市 ~繁華街・駅周辺で高い伸び~

広島市中心部では、中区の流川通りや仏壇通りがプラス711%と、昨年と同程度の高い伸びを維持。広島駅南口周辺も911%と、前年の勢いが続いています。エディオンピースウイング広島(中区)近くは58%、マツダスタジアム(南区)入り口周辺は29%と、スポーツ施設周辺のにぎわいも地価に反映されています。一方、中区の本通りや金座街は12%にとどまり、同じ都心部でも通りによって伸びに差が出ています。

 

府中町 ~県内最長、12年連続の上昇~

府中町大須1丁目はプラス5.4%で、連続上昇年数は県内最長の12年連続となりました。広島市に隣接する利便性の高さを背景に、安定した需要が続いています。

 

東広島市 ~半導体関連の集積で上昇が加速~

東広島市西条本町のブールバール通りはプラス6.7%と、前年を3.3ポイント上回り11年連続の上昇。上昇率は県内2位です。半導体関連産業の集積による住宅需要の拡大などを見越し、上昇が加速しています。

 

呉市 ~横ばいから上昇に転換~

呉市西中央1丁目(呉駅前本通)はプラス6.5%と、前年の横ばいから上昇に転じました。上昇率は県内3位で、呉駅周辺の再開発への期待が地価にも表れ始めています。

 

中山間地域 ~続く下落、広がる格差~

 一方、庄原市西本町2丁目はマイナス2.6%31年連続の下落。安芸高田市吉田町吉田もマイナス2.4%2年連続で下がりました。人口減少の影響を受ける中山間地域では反転の要素に乏しく、都市部との格差は年々広がっています。

 

4. 【深掘り】広島駅前 ~上昇率22.5%、駅前大橋線開業のインパクト~

県内で上昇率が最も高かったのは、JR広島駅近くの南区京橋町・駅前通り(西側)で、前年比プラス22.5%169万円/㎡)という驚異的な伸びを記録しました。5年連続で中国地方トップの上昇率であり、広島南税務署管内では比較可能な1992年以降で最大の上げ幅です。

この背景には、広島駅一帯で進む大規模再開発の効果が集約的に現れています。

 

駅前大橋線の開業(20258月)

広島電鉄の路面電車が新駅ビル2階に高架で直接乗り入れる「駅前大橋線」が開業し、駅と市中心部との時間距離が大幅に短縮されました。今回の路線価上昇の最大の要因と考えられます。20263月には循環ルートの運行も始まり、駅を起点とした回遊性が高まっています。 

 

新駅ビル「ミナモア」の好調

20253月に開業した新駅ビル「ミナモア」は、1年間で約3,300万人を集客。エキエと合わせた2025年度の売上高は539億円と計画を上回る好調ぶりで、駅前のにぎわいの核として完全に定着しました。

 

続々と進む周辺整備

  • 駅ビル2階に幅58mの「大屋根」を設置する工事が始まり、2028年度までに順次整備予定。
  • 20264月には市立中央図書館がエールエールヒロシマ内へ移転開館。開館1か月の入館者数は移転前の約10倍となる約255千人を記録。
  • 駅北口・二葉の里地区では大型複合ビル「ディール広島」が20261月に完成。さらに高層複合ビルが2029年春の完成を目指して進行中。
  • 駅北口のJR広島支社跡地では、2031年完成を視野に入れた新アリーナ構想が官民連携で動き出しています。

 

 

交通・商業・文化の機能が広島駅前に急速に集約されており、「都心東側の拠点」としての地位はさらに高まっていくものと思われます。

南区京橋町・駅前通り(西側)

 5. 【深掘り】広島都心部(紙屋町・八丁堀) ~再開発とオフィス賃料の過去最高更新~

県内最高路線価の相生通りを擁する紙屋町・八丁堀エリアも、駅前に負けない構造変化の只中にあります。

  相次ぐ再開発プロジェクト

  • カミハチクロス(基町相生通地区):地上31階・高さ160mの複合ビルが2027年春の完成予定。オフィスに加え、ラグジュアリーホテル「アンダーズ広島」の開業が予定されており、都心西側の新たなランドマークとなります。
  • 八丁堀37地区(広島YMCA周辺):高層ビル3棟による再開発が2030年代半ばの完成を目指して進行中。
  • 本通3丁目地区:高さ約185mのツインタワーを含む大規模複合再開発が計画されています。

 

オフィス賃料は過去最高を更新

シービーアールイー株式会社の「賃貸不動産市場その動向と相場(20263月期)」によると、広島市中心部のオフィス平均募集賃料は20263月末時点で坪当たり12,210円となり、12四半期連続で上昇して過去最高を更新しました。コロナ禍後のオフィス回帰の流れの中、人材採用や社員の定着を目的に、快適性・環境性能に優れたビルへの移転を図る企業の需要が賃料を支えています。

カミハチクロス(基町相生通地区)

旺盛なホテル開発需要

インバウンド需要の拡大を背景に、都心部ではホテル開発が活発です。紙屋町・八丁堀地区では高級ブランド「アンダーズ」が「カミハチクロス」(中区基町)への入居を予定するなど、外資系高級ブランドの進出が相次いでいます。広島駅周辺でも、南区猿猴橋町で153室のビジネスホテル(20282月開業予定)が計画されるほか、「アパホテル」は2028年春までに3棟・1,167室を開業し、既存3棟(1,263室)と合わせ将来的に3,000室規模の展開を目指すとしています。さらに的場町では「voco広島」(301室)、東区二葉の里ではホテルが入る31階建て複合高層ビルの建設が進むなど、駅周辺は建設ラッシュの様相を呈しています。中区新天地でも2028年秋開業予定の15階建てホテル計画が明らかになるなど、宿泊施設用地への需要は引き続き旺盛です。2025年の広島県の外国人延べ宿泊者数は約212万人と過去最高を記録しており、宿泊需要の底堅さが商業地の地価を下支えしています。

 

小規模アパートメントホテルの供給拡大

大型開発と並行して、地場事業者による小規模なアパートメントホテルの供給も広がっています。広島駅周辺や平和記念公園周辺では、キッチン・家具家電を備えた無人型アパートメントホテルが相次いで開業しており、賃貸マンション事業のノウハウを生かして長期滞在のインバウンド需要を取り込む動きが見られます。また、紙屋町では高価格帯のレジデンス型ホテル、郊外部では中長期滞在向けアパートメントホテルの開業が予定されるほか、南区的場町では全10室の無人運営ホテル「カレイドイン広島」が2026年6月開業し、路面電車「循環線」の供用開始による需要拡大を見込んでいます。

 

これらの小規模施設は、ビジネスホテルの出店が難しい狭小地や既存賃貸物件の用途変更を活用しており、建築費高騰下でも賃貸物件を上回る利回りが期待できることが供給拡大の背景にあります。宿泊特化型の土地需要が都心部の広範囲に浸透しつつあることを示す動きといえるでしょう。

カレイドイン広島(南区的場町2丁目)

6. 今後の見通し ~上昇基調の中に潜む変化の兆し~

広島の地価は総じて上昇基調を維持していますが、不動産鑑定士として実務の現場で感じる「潮目の変化」にも触れておきたいと思います。

 

建築費の高騰と金利上昇

建築費指数は2015年比で約1.4倍まで上昇しており、金利の上昇局面も重なって、開発事業の採算性は厳しさを増しています。金融機関の融資姿勢も厳格化しており、事業に参入できるプレイヤーが限定されつつあるのが実情です。

 

上昇幅は縮小傾向へ

都心商業地は上昇傾向を維持しているものの、こうした抑制要因を背景に、従来の急激な上昇ペースからは減速しており、上昇幅は縮小しつつあります。需要者層の投資規律も厳格化しており、相応の利回りが確保できる物件でなければ成約に至りにくい環境へと変化しています。

 

進む二極化

底堅い需要が見込める中心部(広島駅周辺~紙屋町周辺)と、人口減少の影響を受ける郊外・周辺部との地価格差は年々拡大しています。今回の路線価でも、県内の上昇地点が7割を超える一方で、31年連続で下落が続く地域もあり、「どこでも上がる時代」から「選ばれる土地が上がる時代」へ――路線価の発表は、そのことを改めて示す結果となりました。

 

おわりに

路線価は相続税・贈与税の土地評価の基準となる価格であり、地価の上昇は資産価値の向上と同時に、相続時の税負担の増加にもつながります。広島駅前や都心部に不動産をお持ちの方にとっては、資産評価や相続対策を見直す好機とも言えるでしょう。

 

弊社では、地価動向の調査分析はもちろん、相続・売買・賃貸借など様々な場面での不動産鑑定評価を承っております。ご所有不動産の価値についてお知りになりたい方は、どうぞお気軽にご相談ください。